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プロフィール
HN:
謡 陸葉
性別:
女性
職業:
社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
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trick or treat
ヒロと鐵の、何気ないハロウィンの話
明るくはないですよ
******************************
町の到る所でオレンジのかぼちゃが見られるようになった季節。
温かいと思えば急に冷え込む日々を繰り返し、少しずつ秋が深まり気付けば11月がもうすぐそこに迫っている。
「かぼちゃランタンに火を灯さなかったら、死者の魂が宿るって本当かな」
ケーキ屋のウィンドウに貼り付けられたかわいらしいカボチャを横目に通り過ぎながら、鐵が呟いた。
「さぁ、どうかな」
ヒロは、この手の話にはめったに明確な答えを返さない。
鐵とて本当に答えて欲しくて発した質問ではなかったので適当な相槌を返すだけで大して気にすることもない。
普段ならばこの話はここで終わりだった。
しかしハロウィンという奇妙な祭は鐵の好奇心を刺激するには十分で、どうやら普通では見えないものを見ているらしい友人と出会ってから無駄に増えたスピリチュアルな知識も手伝って鐵の思考はそのまま英国の妖精譚へと流れていく。
「じゃあ妖精王の渡りがあるってのは?」
「少なくとも日本ではないな」
今度は即答に近い答えに思わず足を止めて驚く鐵を目で急かしてヒロは言う。
「いいか、妖精って奴は何もヨーロッパに特有のものじゃない。日本にも『妖精』と呼ばれるものはいる。『妖怪』もいるけどまぁそれはおいといてだ。もしハロウィンの夜にその妖精達が何かしでかすなら日本にも何かしらの民話なり伝説なりが残ってるはずだ。俺が知る限りそんなものはないし、そもそも」
「そもそも?」
「宗教が違う」
「・・・・ずりぃ」
ぷぅと頬を膨らませた鐵が足を速めてヒロを追い抜いて行く。
見なくてもヒロの口元が見慣れたカボチャランタンのように意地悪く釣り上がっているのが後に続く気配で分かった。
「鐵」
「・・・」
「大丈夫、ちゃんと妖精はいるよ」
「・・・・」
「俺は会ったことがある」
前に回りこまれて反射的に止まった足。
呆気にとられて見つめる先には予想通りの笑い顔に少しだけ寂しさが滲んでいる。
「俺が会ったのは、美人のバンシーだった。彼女は夜の公園のベンチで一人で泣いてた」
「誰か、亡くなった?」
「彼女が予期したのは、彼女自身の死だった」
言葉の出ない鐵を促して、今度は仲良く並んで先を急いだ。
目的地はもうすぐそこ。
待ち合わせ時間はもう10分ほど過ぎていた。
「ヒロ」
「ん?」
「その・・・キスは、した?」
俯きがちに訪ねたのは聞いてはいけないとなんとなく察していながら好奇心を抑えられなかった後ろめたさからだ。
そんな鐵の頭をヒロは乱暴にかき回して笑いながら呟いた。
「キスはできない。だって、そんなことをしたら彼女はティル・ナ・ノーグへ帰ってしまう。だから俺は彼女と一緒に泣いて、二人で兄貴に怒られた」
鐵の背中をぽんと叩いて、唐突に走り出したヒロの目指す先には背の高い青年が立っている。
その足にまとわり付くようにしていた子供がヒロに気付いて手を振った。
「妖精の国に帰らなかったバンシーは、今はもう泣いてないのかな」
置いていかれまいと数歩遅れて走り出した鐵の声は、子供が嬉しげにヒロを呼ぶ声に掻き消えた。
*************************
ハッピーハロウィーン
何の方向性もなくただ浮かぶままに書いたらこんなものが出来ました。
寂しい話のような感じもしますが、それはまぁ、秋ですから。
先日、高校時代の同級生の訃報が舞い込みました。
何故?とか、詳しいことは彼女と近しい共通の友人がいないので分りません。
友人というには少し遠い、そんな関係ではありましたが。
彼女の人生が幸せであったことを祈るばかりです。
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