七夕祭り ＯＲ

葉山と日高　　大学生×２



本日、授業終了後に大学の校舎の1階に5ｍ弱もあろうかという巨大な笹が出現しました。
でかいです。
謡はこういう伝統的な子供のお祭りは大好きなので全力で乗ってきました。
代役は哀れな葉山。今回この子若干テンション高いです（当社比）

ホントは半夏生で何か書きたかったのですが、何も浮かばず・・・・・（泣）


牽牛がうりを割った話をご存知の方募集中。

「あれ・・・？」
食堂に入ってすぐ、立ち止まった日高の視線を追うとそこには見事な笹が一本出現していた。
既に小さな人だかりが出来ているそれを眺めながらそう言えばもうすぐ七夕だったかと思う。
近づいてみると記憶しているよりも幾分か小さな短冊とペンが置かれていて、見上げるほどに大きな笹の到る所にカラフルな願い事がゆらゆらと揺れていた。
「これ、去年もあったんかな？」
「いや、なかったんじゃないか」
言いながらきょろきょろとあたりを見回した日高はすぐに葉の間に埋もれるように貼られた紙を顎で示す。

『試験前の荒んだ気持ちを是非童心に帰って癒してください　　　○×大学　広報部』


・・・・・・・・広報部？

発信元に疑問がないでもなかったが趣向自体は嫌いではないので流しすことにする。

「あれ、日高かくのん？」
「ん」

無造作に短冊とペンを取り上げた日高に習って厚手の薄い水色の紙に向き直るが特に書くことが浮かばない。
どうせ乗るならコンセプトは『童心』だ。が、急に言われてもでない物はでない。

「日高、何かいた？」
「えー・・・学業成就？」
「親父か自分」
「いや、だって、試験前だし」
「あかん。夢がない。やり直し」

日高の手元から彼らしい鷹揚な文字でつづられた紙をさらってくしゃくしゃにしてやる。
日高はあ～とかう～とか呻いていたが新しいのを取ってやると大人しくなった。
今度は彼のペンが動く前に確認するのを忘れない。日高は、臆面もなく同じことを繰り返す男だ。

「何かくん」
「んー・・・じゃあ身体健康」
「却下」
「試験は体が資本だから」
「試験から離れ」
「んー・・・ん？・・・・うん・・・・・」

どうやら日高の中の願い事のストックが尽きたらしく（例の2個しかなかったらしい）彼は書くのを放棄して吊るされた願い事を一つづつ読み出した。
何がそんなに楽しいのか、常に笑顔な印象がある彼の目がいっそう細くみえる。

「童心。童心かぁ～・・・何がえぇかなぁ」
「世界平和」
「逆にいやみに聞こえるわ」
「お金持ち」
「いや、童心遠なった」
「あの人と両想いに」
「日高、他人様の短冊読み上げんでえぇよ」
「あ、これは？」
「別にそん中から選ぶルールはないで」

呆れた目を向けてみても日高は笑顔で比較的高いところに吊るされた一枚を示したまま譲らないので仕方無しに覗き込む。

『明日天気になーれ』

「遠足前の小学生やん」
「童心だろ？」

ニヤリと笑う顔が気に入らなくて日高の癖のない髪をくしゃくしゃにしているうちにまぁこの際そんなのでもいいかと思った。
丁度手にした短冊は空色だし。適度にメルヘンでいいじゃないか。

『七月七日が晴れますように』

「よしっ、出来た」
「ん、いいのが書けた」

紙縒り代わりのモールをもてあそびながら日高が笑う。
結局、彼の短冊は白紙のままだ。

「日高、はよかき」
「ん、どうしようかな」
「日高も同じのでええやん」
「ん、んー・・・」

ちょっと困ったように数度瞬いて、日高はそうだなと呟いた。

「俺も、晴れたらいいと思うな」

その目が伝説上の恋人達の逢瀬を願うよりももっと複雑な色をしていたので、思わず日高の幸せを願ってやればよかったと思った。


「日高、明日は晴れやで。知らんけど」
「明日も多分雨だけど、晴れってことにしとくよ」


風に揺れて見えた日高の短冊の裏側には、みんなの願いが叶います様にと、そうかかれていた。