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謡 陸葉
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社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
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文字書きさんに100のお題

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朝からせっせとビデオデッキをいじっている姿を見てはいた。
気になって質問もしてみた。
またマジックの番組でも有るのかと。
その時は、特に変わった様子もなく淡々と答えていたのだ。
深夜にどうしても録りたい特番があるんだ。
だから、今日はビデオ占領させてね。
いつもの調子、少しおどけた風にウィンクをしながら紡がれる言葉。
何も変わったことなどなかった。
いや、具体的に番組についての話が出なかったこと自体、既におかしいのかもしれない。
だが、それが余りにも自然だったので見落としていたのだ。
なにが名探偵だ。
そう、自嘲する様も情けない。


夜、一人寝の寒さに目を覚ますとベッドに入ったときには隣にあったはずの姿が消えていた。
不審に思って手近にあった上着を適当に羽織り、自室の扉から顔だけを出して様子を伺う。
階下にかすかに感じる気配。
ここに来て初めて今朝の会話を思い出す。
例の特番が見たくて我慢できなかったのだろうか。
それとも始めからリアルタイムで見るつもりだったのか。
どちらにしても快斗は今リビングで一人テレビを見ているのだろう。
彼がそんなに見たい特番とはいったいなんだろう。
わざわざ録画をしてまで。
深夜に、自分に気付かれないようベッドを抜け出してまで。
しかも、それを悟られないようにベッドに入った時間は一緒だった。
ただ事ではない。
そう、思った。

足音を忍ばせて階段を慎重に下りる。
人一倍敏感な相手に気付かれないよう入念に気配を消して細心の注意を払いながらだ。
必然的に普段の倍以上の時間が掛かってしまう。
そのことに少しの苛立ちを感じながら最後の一段を踏みしめて詰めていた息を吐く。
ゆっくりと首をめぐらすと5センチほど開いたリビングの扉の隙間から確かに光が漏れていた。
自分の予想は当たっていたようだ。
耳を澄ますと微かにテレビの声も聞こえてくる。
流石に内容までは聞き取れず、ただの空気の振動という認識しか出来ない。


このままこうしていてもらちがあかないと再び歩を進める。
ようやくたどり着いた扉の前でしばし逡巡し、意を決して取っ手へと手を伸ばす。
が、その冷たい感触を確かめる前に動きは止まってしまった。

『出ました、怪盗KIDです!!』

テレビの音声が漏れてくる。
そしてその内容は自分が予想していたどれとも合致しない物だった。

影を縫い止められたように動けなくなる。

隙間から覗いた快斗の後姿が、ひどく頼りなげに見えた。
こんな彼を見るのは初めてだった。
いつも自信過剰で傲慢で天上天下唯我独尊。
あの男の弱っている姿など、見たこともなかった。
それなのに・・・・あれは、誰だ。

勝手に耳に入ってくるブラウン管の中のレポーターの声。
あれは、あの映像は、8年前の、彼の最も敬愛する人物の、犯罪の記録。



「・・・・・・親父・・・・・」



聞こえてきた呟きに、言葉が出なかった。
それがもう少し何がしかの感情を含んでいたなら、何か気休めでもいい、言葉をかけることが出来たかもしれない。


未だに宙に浮いたままだった腕を扉から放し、壁に背を預けて座り込んだ。
己の体を抱きこむように上着を引き寄せる。
こんなにも、自分は彼の抱える闇の前で無力なのだ。
そのことが、寒さをより厳しい物にしていた。

リビングから流れるテレビの音はまだしばらく消えそうにない。


間違っても嗚咽なんか漏らすなよ。


そう、祈るように腕に力を込めた。





 

2004年 2月

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