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プロフィール
HN:
謡 陸葉
性別:
女性
職業:
社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
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9:「あ、明日でもイイ?」
20:「水に流したい過去だよ」
21:「どうして!」
27:「死ね!」
34:「今日は無理だから」
37:「謝ってほしいワケじゃないし」
38:「信じてよ」
45:「趣味みたいなものだし」
46:「心からそう思ってるよ」
53:「懐かしいな」
55:「聞きたい?」
56:「冗談だったら良かったのに」

20以外は大学生パラレル。全て同じ時間軸。繋がってたり。



配布元:『SEVENTH SEVEN

 

 



9 「あ、明日でもイイ?」   工藤・黒羽・服部

「よし、今日は俺のおごりだ!」
黒羽快斗がそんな事を言い出したのは今日が山のように詰まれたレポートの提出日で、全て無事に提出済みだったからだ。
その並々ならない解放感に浸りながら日頃から陽気な奴が更に機嫌を良くしての発言。
それにこちらも上機嫌な工藤と服部は勢いよく乗っかって近くのファミレスへと繰り出す。
「二人とも好きなもん食っていいぜ」
「よ!黒羽!ふとっぱらやなぁ!」
「お前ホントに大丈夫なのかよ」
「まぁーかせとけって!」
どんとこい!と胸をはった黒羽に二人はそれならばと遠慮なくデザートまでキッチリ注文した。
ただし、デザートに関しては黒羽自身が特大チョコレートパフェなんぞを頼んでいたから文句は言えない。
しかし、さぁ勘定だという段になって黒羽が焦った様にカバンをガサゴソとやりだした。
それを見た二人が嫌な予感に顔を見合わせる。
「・・・・・黒羽?」
「あ、明日でもイイ?」
財布忘れてきちゃったv
とハート付きでのたもうた奴は次の瞬間にはレジの前の床に沈んでいたという。

「すみません、領収書貰えますか」




20 「水に流したい過去だよ」  工藤・黒羽・哀

「あなたたち、先に告白したのはやっぱり黒羽君の方でいいのよね?」
「灰原、何故俺に聞かないんだ」
工藤邸での和やかなティータイム。
優雅にハーブティーを口に運んでいた哀が唐突にそんな事を言い出した。
目の前に座っている新一にではなく、キッチンで茶菓子の追加をしていた快斗に向かったその問いの不自然さへの抗議はキレイに無視される。
自家製のクッキーを片手に戻って来た快斗はそんな二人を見て苦笑しながら自身もソファーに席を取る。
「どうしてそんな事聞くのかな?」
「毛利さん達が気にしてたのよ」
予想しない場面で幼馴染の名前を出されて新一が飲んでいた珈琲を盛大に噴出す。
素早くタオルを手渡しながら快斗は納得したとしきりに頷く。
「で?どっちなの?」
「それがね、俺の方が口説かれちゃったんだよね」
「・・・・・・ホントに?」
「お前がいないと調子でないから離れるなって言われました」
「それって自覚症状ゼロだったんじゃないの?」
「そこはほら、俺も信じられなかったからちゃんとはっきりさせたさ。工藤は俺が好きなのかって」
「そしたら彼は答えたの」
「ちゃんと好きって言って貰いました」
その時のことを思い出しているのかだらしなく頬を緩ませた快斗を放置して哀はようやくテーブルを拭き終った新一に無言で問いかける。
彼女の視線を受けて新一はぽりぽりと額を掻きながらタオルを片手に立ち上がる。
「水に流したい過去だよ」
「過去は消えない物だよ新一君」
どちらにしても彼らがラブラブなのに代わりはないと傍らでじゃれあう二人を尻目に哀はクッキーに手を伸ばした。



21 「どうして!」  工藤・黒羽・女子生徒

「悪いんだけど・・・」
廊下を曲がる前に探していた人物の声が聞こえて来た。
大きさからすぐそこで話しているのがわかる。
が、その声の質が黒羽の足をその場に縫い止めた。
その声は彼にしては珍しく明らかな困惑に満ち、低くくぐもっている。
「どうして!」
黒羽の目的の人物──工藤とは打って変わって酷く耳障りな甲高い声が上がった。
それを耳にして黒羽はまたかと思う。
その声には覚えがあった。最近構内で工藤と噂になっている女の物だ。
流言を本物にしようと行動に出たのだろう。
運の悪いことに黒羽はその場面に遭遇してしまったのだ。
「ねぇ、教えて。どうして私じゃ駄目なのよ!」
彼女には工藤の女友達の中で自分が一番だという自負があったのだろう。
当然受け入れられる想いだと高をくくっていた。
その滑稽さを黒羽は喉の奥だけで嘲う。
右手で顔面を覆い、吊り上る口元と奇妙に歪む目じりを隠した。
女の声が誰もいない廊下に響く。
ともすれば彼女に羨望の目を向けそうになる自分を必死で押しとどめた。
言えるだけいいじゃないか。お前らは。
一方的に会話を終わらせた工藤の、遠ざかる靴音が聞こえる。
徐々に消えて行くその音に、黒羽はもう一度低く喉を振るわせた。
いっそすべて壊してしまえればと、思いながらも何も出来ずにいる己が可笑しくて。
笑いが止まらなくて、涙が出そうだ。




27 「死ね!」  工藤・黒羽

「勿体無い事するよな」
いきなり背後から掛けられた恨めしげな声を、食堂で本を読んでいた工藤は足を組みかえることで軽く流す。
相手はそんな態度を特に気にするでもなく正面の椅子を引いた。
「何がだよ」
返事を待たずに一方的にズルイと言い募る男に、工藤は本から目を上げずに質問を投げる。
反応を返された方は途端にニッと人の悪い笑みを浮かべた。
「モテル一人身は嫌味だなって話」
してやったりと言った調子で答えた黒羽に、工藤は何で知っているのだとため息をつく。
しかし無駄に情報通の彼にそれを聞くのは愚問だった。
いつでも、どこからともなく様々な情報を仕入れてくる。ルートは未だに不明だ。
「お前ほどじゃねぇよ」
黒羽が持って来たアイスを一口すくいながら軽く返せば、彼はほんの一瞬だけ虚を付かれた顔になって見返してきた。
予想外の反応に言った工藤の方が驚く。
「何だよ」
「いや、誰がモテルとかモテナイとか、工藤は興味ないと思ってた」
違った?首をかしげながら視線だけで問われたそれに、工藤は焦った。
「お前の取り巻きはいつも煩いんだよ」
辛うじて平静を装ってみるが黒羽相手では誤魔化すのは難しいだろうと思う。
が、身構えた工藤に対し、黒羽はあっさりと身を引いた。
違和感がなくもなかったが、下手に追求して薮蛇になっては堪らないと工藤は大人しく口を噤む。
「俺はいいんだよ」
「何で」
「俺は工藤の旦那狙ってるから」
「死ね!」
「あははーやっぱりー?」
黒羽が放った冗談に、工藤は思わず赤面して暴言を吐く。
それを楽しげに見やる黒羽から目をそらし、軽く踵を蹴飛ばして抗議した。
彼の冗談は時々心臓に悪い。
「俺も、当分恋人なんて作る気ないんだよ」
再び視線を手元に戻しながら呟く。
それに、黒羽は来た時と同じ台詞を吐いたが、工藤はもう何も返さずに活字だけを追った。




34 「今日は無理だから」 黒羽

気付かれていない自信など無い。
「今日は無理だから」
高校時代は家でKIDの特番を見るからと通し続けた断りだ。
でも、相手が変われば不審がられるのは必至だった。
「ごめん工藤、また今度!」
何度こうして彼の誘いを断ったことか。
普段は暇さえあれば彼の隣にいる俺が。
KIDの、予告日だけは彼に近づかない。
申し訳ないとか、けじめとか、そんなことじゃない。
ただ、俺の神経が彼を探偵として警戒するから。
それが、逆に彼に俺とKIDを意識させるだろうことは容易に想像がついた。
気付かれていない、なんて、そんなことは多分、ありえないんだ。
相手はあの名探偵。

彼は真実を見つける。
きっと。
この世の全ての事実から。
真実を、導く。

でも、きっと俺は見たいんだ。
君が見た俺の真実を。

俺自身でさえも見失いかけた、KIDの真実を。


37 「謝ってほしいワケじゃないし」 工藤・ちょっと黒羽

「ごめん工藤、また今度!」
そう言って、慌てて去って行く後姿に工藤は小さく、しかし深く深く、溜息をついた。
またかと思う。まだか、とも。
結果を予想しながらの誘いに、彼は毎回カマを掛けたこちらが申し訳なくなるほどの謝辞を降らせる。
そしてこちらに何も言わせずにバタバタと去って行くのだ。
ほんとゴメン。ごめんな。
聞き飽きた声が蘇る。
「謝ってほしいワケじゃないし」
受け取る相手のいない呟きは、虚しくコトリと地に落ちた。
徐々に確信に変わる仮定に、胸の中にどろりとしたものが込み上げる。
例え彼が自分の知る人物の影を背負っていたとしても。
もう、監獄へ、なんて、言える自信は無かった。
それがより苦い気持ちにさせる。
悔しかった。
探偵としても、友人としても。


38 「信じてよ」  黒羽・沖田

どうしても、言えない言葉がある。

「あれ、沖田だけ?」
「今日は皆まだみたいやで」
昼休み、いつもなら各々が自然に集まってくる学食の指定席には沖田の姿しかなかった。
黒羽が近づくと沖田は広げていた資料を片付けて鞄の中にしまう。
代わりに取り出したのは大量の旅行代理店のパンフレットだった。
「なにこれ」
「何て、工藤君から聞いてへん?」
夏休みの計画。皆で旅行。黒羽君はどこがええ?
言われて慌ててストップをかける。
放って置くと沖田はそのままの暢気な口調で肝心な所は全て流して行ってしまいそうだ。
「服部が言い出してん。工藤君がその後黒羽君と約束あるゆうから伝言頼んだんやけど」
おかしいなー。まぁええか。そういうことやねん。
全く持ってよくなどない。
「あ、そういえばなんやあの時、黒羽君は無理なんちゃうかてエライ引きさがっとったな工藤君」
もしかして、ホンマに無理?
心配そうに覗き込んでくる沖田に今はまだなんともなどと曖昧に濁しながら笑う。
これは、本格的にヤバイかもしれない。
「黒羽君は、あかんなぁ」
「え、何?」
突然宥める様な口調で掛けられた声に驚いて目を見開く。
ぶつかった視線は子供にするように柔らかくて、居心地が悪くなった。
「信じてよ」
「おきっ・・・」
「そう、言うたらえぇねん。工藤君に」
「っどうしたんだよ急に。変な奴」
「うん」
咄嗟にポーカーフェイスで取り繕ってはみたが彼には通じなかったかも知れない。
沖田は探偵ではない。しかし彼は剣士だ。工藤とは違った方向からふいに核心を突いてくる。
ひどく、自然に。
今日の天気の話でもするように。
黒羽の動揺に気づいているのかいないのか、沖田はもう楽しげにパンフレットを捲っている。
彼は聡い。そして、優しい。
その言葉を、つい、信じそうになってしまう。
「そうだな、言えたらよかったな」
「ん、なんか言うた?」
「なんでもないよ」

本当に、言えれば良かった。君に。
そう言える自分なら、よかった。


45 「趣味みたいなものだし」  KID・工藤 

「お前、何で盗むんだよ」
いつもの様に対峙した夜の屋上で、探偵から発せられた問いに、怪盗は興味もなさそうに応える。
「別に、理由なんてないさ」
そこに宝石があるから。
不真面目な声に、探偵は鋭い視線を投げるが、すぐに痛みを堪える様に顔をゆがめた。
怪盗はその顔に少し動揺する。
しかし何も気づかないふりで言葉を重ねた。
「趣味みたいなものだし」
間をおかずに探偵から蹴りが飛ぶ。
フェンスに飛び乗ることでよけた怪盗は口元に笑みを浮かべた。
決してはがすことのない仮面。
探偵の求めた答えも、行動も、分かっている。
気付かれている事に、気付いている。
それでも。

「ごめんな」

相手に聞こえないように小さく、1つだけの真実を紡ぐ。
夜の闇は、もう探偵の物ではなくなったのだから。


46 「心からそう思ってるよ」  工藤・服部・沖田

「黒羽のこと、どないするつもりや」
服部がそう切り出した時、そこには工藤と沖田がいた。
さり気なく席を立とうとした沖田を、服部が無言で止める。
工藤をにらんだまま、服の裾を掴んで放さない服部に、諦めた沖田が座りなおすのを待って服部が再び口を開いた。
「お前、迷うとるやろ」
「何が」
「黒羽や」
核心を突く単語を口にしないのは誰を気にしてか。
沖田か、それとも周囲の生徒達か。
それとも、当人達が決定的な事を論じるのを恐れての事なのか。
興味がないように遠くを見つめたまま動かない工藤に、服部は眉をひそめる。
己が酷な問いをしていることは分かっていたが、ほおって置くわけには行かなかった。
彼がどんな結論を出したとしても、構わないと思っている。
しかし、向き合いもせず、誤魔化したままの今の状況は探偵としても、友人としても、正さずにはいられない。
「あいつは、やりたいようにやればいい。俺は、俺のやるべきことをやるだけだ」
明日の天気を語るのと同じ口調で工藤が言う。
「それでお前は納得しとるんか」
「心から、そう思ってるよ」
握られたままになっていた沖田の服の裾が、キュッと強く引かれる。
見ている方が痛みを感じるほど硬く力が篭った服部の右手が震えていた。

「俺は、黒羽君好きやで」

不意に沖田が呟く。
驚いて目を見開いた2人に、沖田は笑いながらもう一度、はっきりと言う。

「俺は、黒羽君好きや。服部も、工藤君も、白馬君も。皆、好きやで」

服部の腕から力が抜けた。
うつむいた工藤が席を立つ。

「俺だって、同じだよ」

無理やりに、絞り出したような声だった。


53 「懐かしいな」  黒羽・工藤

「杯戸シティホテルの屋上に12時」
言い出したのは工藤だった。
黒羽は何のことだと首をかしげる。
ドキリと大きく跳ねた心臓を隠すのは、既に反射の域だ。
その反応を予想していた工藤は何も言わずに絶対に来いよと念を押して去った。

そして件の12時。
ゆっくりと屋上へ一歩を踏み出した黒羽は見覚えのある光景に眩暈がしそうだった。
備え付けられたファンスのすぐ傍から、眩しい光のロケットが空へと飛び立って破裂する。
出来るなら、万に一つもないだろうが、出来ることなら、はぐらかしてしまいたかった。
でも、もう無理なのだと黒羽の理性が告げる。
迷いなく振り向いた工藤の目が黒羽の縋るような希望を粉々にした。
「懐かしいな、2年前、俺達はここで初めて出会った」
「あぁ、懐かしい」
まっすぐに見返すことが出来ず俯いたまま、黒羽は己の退路を絶つ。
背後で処刑の執行を告げるように重くドアが閉まる音がした。
2年前の、あの時間が近づいている。

「そろそろ、はっきりさせようぜ。黒羽」

強いばかりだった工藤の声が、一瞬奇妙にゆがんだ。
それが黒羽に最後の覚悟を決めさせる。

バサッ
鮮やかな白が月の光を反射して闇に浮かび上がる。

「よおボウズ、何してんだ?」

肺が凍りつきそうな冷気をいっぱいに吸い込んで。
出会いと、終わりを告げるスラングに変えた。




55 「聞きたい?」  服部・沖田

沖田の下宿は見るからにみすぼらしい2階建てのアパートの最奥である。
6畳の和室に小さな台所、トイレと風呂が申し訳程度に添えられ、柔な鉄の棒を渡しただけの不安定なベランダが余り機能性を示さぬままについていた。
沖田はよくこのベランダに片足だけを投げ出して窓辺に座り込み、何をするでもなくじっと外を眺めていた。
時々下から見上げると、僅かに何かを口ずさむように口元が揺れていることがある。
よく入り浸っている服部が持ち前の好奇心で沖田に訪ねると

「聞きたい?」

と、彼は言うのだ。
訪ねているふりをした、柔らかな拒絶だった。
それを言われてしまうと、服部は『まぁええわ』と言わないわけにはいかなくなる。

相手は沖田だ。
沖田だから、主張を通せば何の屈託もなく謎解きを始めるのだろうが、それをしたら彼を失うのではないかという根拠のない不安に駆られる。

「沖田」
「なん?」
「そんなとこで寝たらあかんで。落ちてまう」
「落ちへんよ」

心配性やな、服部は。
差し込む光を背にした沖田は確かに笑っているのに、泣いている様に見えた。

気のせいなのだ。恐らくは。
彼は決して弱くはないし、世捨て人でもない。
泣きたいのは、己の方なのだろう。

沖田は、それも全て承知で、笑うのだ。



56 「冗談だったら良かったのに」  黒羽・工藤

凍りつきそうな静寂と、実際かなりの冷気が支配した屋上。
床にしゃがみ込んだ格好で黒羽は語り続けていた。
「冗談だったら良かったのに」
父親が初代KIDだった、その事実から全て。
呟く黒羽の隣で、工藤は終始無表情で一言も口を挟まなかった。
それが黒羽の不安を助長し、彼を更に雄弁にする。
「大学で工藤に会った時さ、やっちまったって思ったよ。でも、避けられなかった。どうしても。
 しゃーねぇじゃん。俺、お前と普通に友達してみたかったんだ」
ごめんなと、苦笑か自嘲か分からない歪みを晒す黒羽は常の笑顔もポーカーフェイスも忘れてしまったようだった。
少しずつ、終わりが近付いているのを意識する。
次に工藤が口を開いた時がタイムリミット。
そう思うから、矢継ぎ早に繰り出したい話題さえ今は見つからない。
隣で、工藤が溜息をつく。黒羽が身構える。ゆっくりと、口を開く。
「俺は、探偵だ」
「うん」
「どう転んでも、お前がやってんのは犯罪で、お前は裁かれるべきなんだ」
「うん」

沈黙が落ちる。
工藤が再び溜息をついた。

「でも、それは俺の役目じゃない」
元々どろぼうは専門外だし。
「もう、真実は隠されてねぇんだろ?だったら、そこで終わりだ」
大切な人が犯人だったらどうするか、その答えを黒羽は知っていた。
だからそんな彼をここまで曲げさせていいものかどうか迷う。
嬉しい答えだった。この上なく。
「らしくねぇぜ、工藤。お前は俺なんかの為に曲げないでくれよ」
「曲げてねぇよ。誰がコソドロなんかの為に自分曲げんだ」
さっきから言葉を発する度に息をつくくせにそんな事を言う。
もう、嬉しいのか悲しいのか、分からなくなった。
「お前は弁解の出来ない今を生きてる。それだけで、もういいだろ」

絶句。涙。
黒羽は覚悟するしかないようだと白旗を揚げた。
彼をもう一度、闇に引きずり込んでしまう、その覚悟を。



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