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プロフィール
HN:
謡 陸葉
性別:
女性
職業:
社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
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1 「へぇ、それで?それが何?」
8 「・・・・・・え?」
19 「勝負しようよ」
59 「雨、降ってきたね」
60 「何もない」



配布元:『SEVENTH SEVEN 』 

 


1 「へえ、それで? それが何?」 高校生×2

登校途中の十字路で、前方にフラフラと足元が定まらない奴を見つけた。
もう見飽きたその後姿に俺はチャリンコの速度を緩めつつ自然溜息を付く。
「おい」
声を掛けるとゆっくりと首をめぐらせた奴は俺の顔を見て緩慢に笑った。
本当に嬉しそうなその笑顔に改めて声を掛けたことを後悔する。
「おはよう明智君。今日もよろしく頼むよ」
「・・・」
「お願い明智くぅん」
「キモイ」
嫌そうに俺が顔をゆがませるのにも楽しそうにケタケタ笑うから、俺は仕方なく奴を促す。
「ほら、早くしろ」
「サンキュ」
よっこらせと重くなったペダルを漕ぎ出すと、後ろに乗った奴はもう眠る体制に入ったらしい。
「お前今日一限岩熊の数学だぞ」
「へぇ、それで? それが何?」
「だから・・・いや、いい。寝てろアホが」
三秒後、肩口から聞こえてくる穏やかな寝息に、今日も俺は明日こそは歩かせようと固く誓うのだ。



8 「……え?」 高校生×4

「あ!」
昼休み、いつもの面子でわいわいと昼食を食べていた時だ。唐突に一人が声を上げた。
何事かと思って箸を止めると、今度は右隣から声が上がる。
「い!」
「う!」
なんだなんだと思っているうちに左サイドからも後を次ぐ。
ふと気付くと3人分の視線が自分に集中していた。
なんとなく緊張して背中に嫌な汗をかく。

「・・・・・・え?」

疑問符つきでおずおずと答えると奴らはにんまりとわらって『よし!』と声をそろえた。
次の瞬間にはもう全員が何事もなかったかのように箸を動かしている。
一人取り残されながらなんでこいつらとつるんでるんだろうかと今更ながらに疑問に思った。



19 「勝負しようよ」 高校生男女

耳元で唸る風を煩いと思ったことは無く、それよりもいっそ自分が吐く息が止まってしまえばいいと思った。
必死で繰り出す一歩が常に大地を感じ、蹴り出した砂の一粒を数え、すれ違う空気を掴む。
まるで自分が形をなくしてしまったような浮遊感。
それを唯一繋ぎとめる激しい吐息が白線を越えた瞬間に己の全てを埋め尽くして。
それまでの自然との一体感など嘘のように自分は人間なのだと感じさせる。
「しんどー」
トラックから離れ、人工的に植えられた芝生に転がって一定のリズムで揺れる肉体を持て余す。
この体さえなければ、きっともっと早く、長く、夢を見ていられるのに。
「親父だぞ~高橋」
「親父で結構。俺は今自分の溢れる可能性を皆様に披露した直後で疲れてるの」
「それは大変ねー」
不意に光を遮るように被せられた女物のタオルが故意に濡らされているのか順調に体温を奪っていく。
ひんやりとした心地よさに瞼を落とし、徐々に落ち着きを取り戻して行く鼓動を聞いていた。
「ねぇ」
「ん」
「勝負しようよ」
「・・・」
「聞いてる?」
「お前じゃ相手にならねぇよ」
紡ぐ言葉が終わらぬうちに流れ込むように視界が光で溢れ、タオルが取り払われたのだと余り回らない頭で考える。
文句を言おうと合わせた視線が既に勝ち誇ったように光っていた。
「だって一緒に走ったら私のタイム上がるじゃない。協力しなさいよ」
「嫌だね」
途端に不満を湛える真直ぐな眼に笑って、俺は再び目を閉じる。
あの世界は、俺だけの物だ。
今はまだ、一人で走っていたいんだ。




59 「雨、降ってきたね」  小学生男の子・女の子

卒業遠足を明日に控えたその日、僕と彼女は日直だった。
誰かと遊ぶ約束もしていない。
外は厚い雲がかかっていて、もう薄暗くなっていた。
今にも降り出しそうな気配に、彼女はとても心配そうに何度も窓に目をやる。
日直の仕事は黒板の清掃と書き換え、掃除場所のチェック、机の整頓、教卓に飾られた花瓶の水換えと日誌をつけること。
簡単な作業だけれど、真面目にやれば結構時間を食う。
いつもなら適当にやるのだけれど、彼女はとても『真面目な子』だったから、もう教室には誰もいないし、学校の中からも人の気配が薄くなっているみたいだった。
日誌に彼女のキレイな文字が並んでいくのをじっと見つめる。
ふと、止まった手に彼女を見ると、また外を見ていた。

「雨、降ってきたね」

彼女の声が悲しそうだ。

「傘持ってる?」
「持ってない」
「私も」
「職員室で借りればいいよ」
「うん」
「・・・」
「明日、晴れたらいいね」
「・・・・・うん」

彼女の手が、また日誌の上を滑り始める。
学校の中はとても静かで、雨の音と、彼女の鉛筆の音しかしなかった。
僕は黙って教卓に置かれたティッシュペーパーに手を伸ばす。
このまま、雨が上がらなければいいのに。
そう思いながら、僕は照る照る坊主を作った。
彼女は、嬉しそうに笑っていた。


60 「何もない」  高校生×2

唐突に、携帯が着信を告げる。
専らメールでのやり取りしかないので、少し驚きながら通話ボタンを押した。
よく知った声が、よおと言う。
出る前に相手を確認していても、やはり少し、驚いた。
その、クラスが離れた友人からの電話を受ける日など何故か来ないと思っていた。

「何、どうしたん?」

天変地異のでも起こるのかと、そんな事を言いながら尋ねた。
奴は、暫く笑ってから言い放つ。

「何もない」
「は?」
「やから、電話してみただけやって」
「気持ち悪いこと言わんとって下さい」

奴は喉の奥でくつくつと笑う。
そんな笑い方をするのも、珍しいことだった。

「なぁ、ホンマにどうしたん?おかしいで自分」
「何もないって。せやな、俺は結構お前のこと、大事なんやって事かな」
「なんや、告白か。鳥肌立つからやめてくれ」
「いや、どっちかっちゅーと、別れ話やなぁ」
「付き合ってないっちゅーねん」
「たっくん酷いわぁ」

誰がたっくんじゃと毒づけば、また一人、可笑しそうに笑う。
不信感よりも、不安の方が胸を満たした。

「なぁ、何で別れ話?」
「ん?一回くらいやってみたいやん?好きやからこそ、別れようって奴」

それから、奴は一仕切り今日見たテレビの話などをして、一方的に電話を切った。
嫌な気分だけが残り、全身が痺れた様に暫く動けなかった。

その日から、奴とは話をしていない。
近付くことが許されなくなったのだ。
奴に向かった足も、声も、寸前に奴から向けられる鋭い視線で全て止められる。
なるほど、見事な別れ。
俺は、彼に突き放されることでまんまと守られているのだ。
理不尽な苦痛と戦い始めた彼を助ける術は、あの電話で全て奪われていた。



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