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プロフィール
HN:
謡 陸葉
性別:
女性
職業:
社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
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2:「本音じゃない?」
17:「逃げ場がない」
32:「うんざりだ」
36:「そんなの理不尽だ」
40:「適当で良いんじゃない?」
48:「かなり好き」
52:「ちょっと不思議だな」

 

配布元:『SEVENTH SEVEN






2 「本音じゃない?」 サンジ・ゾロ・ロビン

買い込んだ食材で大きく膨らんだ紙袋を両手に抱え、町の雰囲気を楽しみながら宿までの道を歩く。
と、突然背後に気配を感じて思わず自慢の右足を繰り出すとそこにはゾロが俺の足を避けた妙な格好で固まっていた。
「何してんだ。変なポーズだなぁ。そりゃちょっと受けねぇぞ」
「テメェのせぇだろが!」
「あーわりぃわりぃ。つい」
軽く謝るとゾロは一つ鼻を鳴らして憮然と立ち上がる。
どうもご機嫌斜めらしい。
しばらくじっと俺を見ていたかと思うと、俺の右手から紙袋を一つだけ奪って歩き出す。
「お前あんまり出歩くな」
「は?」
すれ違いざまに呟かれた言葉の意味が分からず聞き変えずがゾロはそのまま宿の方へと歩き続ける。
行き場のなくなった右手をグーパーと動かしながら思わずポカンと見送ってしまった。
「本音じゃない?」
「うわぁ!ろ、ロビンちゃんいつからそこに」
すぐ傍で聞こえた声に驚いて声を上げると最初からよと微笑まれてしまった。
「で、なんだっけ?」
「さっきの言葉。剣士さんの本音じゃないかしら」
「本音・・・?」
「コックさん、市場で本当に楽しそうに買い物してたし、皆がそれを見てたからやきもち焼いたのね」
「は!?」
かわいいじゃない?と大人の台詞で続けられても困ります。
俺は顔が赤くなるのを意識しながら軽くなった荷物を抱えなおして周りを見渡す。
一周して視線を戻すと知的な考古学者様はもう一度優雅に微笑んだ。
ありえねー・・・・・。
急に体から力が抜けて俺はその場にへたり込んだ。

17 「逃げ場がない」 ゾロ・サンジ

「お前は卑怯だ」
拒絶をあらわにしたサンジの声が深夜のキッチンの空気を鈍く震わせた。
壁際に追い詰める格好になっていた相手の方はそのままの体勢を崩さずに動きを止める。
それを見て取ったサンジは背中を預けてそのままずるずるとしゃがみ込んだ。
表情を読ませまいと顔を覆った両手は刺すように冷えた外気に晒されても尚熱く燃えていた。
「おい」
「黙れ!テメェは毎度毎度自分の欲ばっかりむき出して向かってきやがって」
相手にとっての自分の位置が情欲の掃き溜めでしかないのではないかと錯覚させられる。
それでも、時々思い出したように己を拘束する四肢の全てが予想を裏切って限りなく優しいのだ。
彼が紡ぐ睦言は飾り気など何もなく、それはスコールの様に激しく全身を打つ。
「好きだ、やらせろ、テメェの言葉ばっかり押し付けて俺に口も挟ませねぇ」
それが余りにも真直ぐで力強く、時に恐怖さえ抱く。
本気の相手に腕力に訴えられたら一溜まりもないことなど分かり過ぎるほどに分かっているから。
「お前がそんなだから、俺は・・・」
その言葉の真実を疑う余地などない透明さで求められ、拒絶も出来ず。
しかし受け入れる言葉を搾り出す前に塞がれて。
どこにも一歩を踏み出せずに。
「逃げ場がない」
弱弱しく零した呟きは相手から激情を取り除くには十分な効果が在ったらしい。
サンジはそこで始めてゾロの声に痛みが混じるのを聞いた。
「逃げたいのか」
「・・・」
「テメェは、俺から逃げてぇのか」
「違う」
そうじゃなくて。
不意に顔を挙げ、ゾロの顔を真正面から見返したサンジは求める時と同じように全て引き返そうとする相手を繋ぎ止める。
「俺に惚れろって言ってんだ」
「そう言ってんだろ」
「違う。好きと惚れたは全然違う。それが分かるまで俺を見ろ。俺に、溺れろ」

もっと、俺の愛を求めて欲しいんだ。




32 「うんざりだ」 ゾロ・サンジ

「別にどうでもいいけどよ」
安眠を貪る人間の米神まで数センチのところに大きな穴をこしらえておきながら、サンジは明後日の方向へ向かって暢気な口調でそうこぼす。
「っぶねぇな。喧嘩売ってんのかくそコック」
「てめぇと喧嘩してる程俺は暇じゃねぇし、慈善家でもねぇんだよ」
そんな事を言いながらすぐ傍に腰を下ろしたサンジを、ゾロは怪訝そうに見やった。
どうやら仕事の合間の小休止の時間らしい。
サンジの首筋を、汗の粒がいくつも浮いては固まりになって伝って行く。
「うんざりだ」
「あ?」
「こう暑くちゃ男共の世話なんかやってられるかっつったんだ」
「じゃあ止めちまえよ。子供じゃねぇんだから適当にやんだろ」
無視して寝直したい所を機嫌を損ねると後々面倒だと答えてやったのに、サンジの視線はさっきよりも険しくなった。
なんだと問えば、別にと返してそっぽを向く。
いよいよ扱いに困ったゾロはもうどうでもいいかと今度こそ二度寝を決め込んだ。
その様子にサンジはため息をついて腰を上げる。
汗にまじってふわりと、シチューの香りがした。
「今日はシチューか」
「ん、あぁ。なんだ、わかるのか?」
何気なく言ったつもりが予想外に相手の興味を引いてしまったらしい。
ゾロは驚いているサンジをちらりと見てため息をつく。
自分はこいつにどこまで馬鹿だと思われているのか。一度問い質すべきだろうか。
「この前食った奴だろ。それくらい覚えてる」
「へぇ。お前がねぇ。俺の飯の匂いを?」
「んだよ、文句があんならそう言え」
「いや、てめぇは飯が出来るまで寝てろ。ばーか」
去り際、再度絡まった視線からはもう険しさが消えていた。



36 「そんなの理不尽だ」  サンジ・少年

「おにいちゃん迷子?」
街の外れに座り込んでタバコを吹かしていると、可愛らしい声にそう尋ねられた。
見ると、ふわふわの猫毛を風に遊ばせた金髪の少年が小さな花を握り締めて立っている。
その花が髪の動きに合わせるように揺れるのが彼をより愛らしく見せた。
「いや。ちょっと一休みさ」
「ふーん。ねぇ、なっちゃん知らない?」
少年はよいしょと掛け声を掛けてサンジの横に腰を落とし、期待を込めた瞳を向けた。
サンジはその様子を目を細くして眺めながら困ったように優しく返す。
「その『なっちゃん』が何者かはしらねぇが、生憎とその花が似合うようなレディには会ってないな」
「え、なんでなっちゃんにあげるの知ってるの!?」
サンジの言葉に少年は顔を赤くして目を丸くした。
「喜んでくれるといいな」
「うん!」
少年は自分が花をプレゼントされたかのように嬉しそうにえへへと笑う。
つられるように、サンジも笑みを零した。
「ねぇ、お兄ちゃんは好きな人いる?」
「あぁ、いるよ」
「じゃあ、その人にプレゼント貰った時、うれしかった?」
半分身を乗り出して尋ねる少年の手の中で、花はひどく大きく見えた。
「さぁ、どうかな」
「え?」
「俺は、プレゼント貰ったこと無いから」
「お兄ちゃんがプレゼントあげないから?」
「どっちかってゆーと、あげまくりだな」
毎日毎日。特別な形をとることはかなり稀だけれど。
「そんなの理不尽だ」
「難しい言葉しってんなおまえ」
褒められても少年は笑わなかった。
今聴いた話が相当気に入らなかったようで、強く握られた花がいっそ哀れだ。
やんわり指摘してやると、少年は慌てて力を抜く。
そしてまたサンジに悲しげな目を向けるのだ。
「寂しくない?」
子供らしい素直な問いに、サンジは優しく頭を撫でてやる。
この子には分からないだろうけれど。
「いや。俺たちは、それでいいんだ」
微笑むサンジに少年は納得がいかない顔をする。
それでも、つられるようにへらりと笑った。

少年の手の中で、相変わらず花が風に答えて小さく揺れていた。



40 「適当で良いんじゃない?」  ナミ・ゾロ

もう、認める他無いのだろうか。
いつもの如く甲板で一人鉄団子を振り回しながらゾロは全く関係の無いことを考えていた。
最近ことに奴のやることが気になる。
その一挙手一投足にいちいち反応する自分がいるのを自覚したのはつい先日のことだ。
思い当たることは上げればきりが無い。
潔く認めるしかない、とは思うのだが。まさかという気持ちも拭えないままなのだ。
「適当で良いんじゃない?」
唐突に頭上、蜜柑畑の中から声がする。
見上げるとナミが口元をニヤつかせながら見下ろしていた。
「あんたにしては珍しく悩んでるじゃない。慣れない事されるとこっちが調子狂うのよね」
好きなんでしょ?男らしくさっさと認めたら。
あえて誰をとは言わなかった彼女に、逆に現実を突き付けられた気になった。
適当。適当ってなんだ。
適当に、好きだと言っていいはずがない。
「馬鹿ね」
むっつりと押し黙ったゾロに、ナミは口調を和らげて言う。
「彼は、きっと喜ぶわ。誰からであれ、それが心からの好意ならね」
そうだろうか。
言いたいことだけ言って去ってしまったナミの言葉を反芻しながら、その日ゾロは一日中腕を振り続けた。



48 「かなり好き」  ゾロ・チョパ 

「かなり好き」
「は?」
「いつも喧嘩してるのをそう言うんだって、本屋で会ったおじさんが言ってたんだ」
ゾロは、サンジのことをかなり好きなんだな。
俺、二人は仲悪いと思ってたけど、違ったんだなぁ。
そう一人で感心しているチョッパーを前に、ゾロは上手く思考が出来ないでいた。
ちょっと待て、と、反論する声も出ずにひたすらに口をぱくぱくと動かしている。
彼のことだ、他意はないのだろう。
が、件の女好きが聞いたら卒倒しかねないその台詞に思わず辺りの様子を伺ってしまった。
ゾロが一人で不審な行動を取っている間にもチョッパーはしきりに頷いて嬉しそうにへらへらと笑っている。
チョッパーとしては、終始喧嘩をしている二人が実は互いを嫌っているのではないと知ってかなり嬉しいらしい。
その笑顔を見ていると、心外だと怒鳴る気も簡単に失せてしまった。
ゾロはため息をついて彼の帽子をポンと叩きながら言う。
「チョッパー、お前その台詞あいつには言うなよ」
「サンジか?なんでだ?」
「なんでもだ。いいか、男の約束だ」
「おっおう!男の約束だな!俺、絶対言わないぞ!」
重要な任務を授けられたように真剣に声を上げる瞳。
次いで心底嬉しそうににっと笑う。
彼はこの船に乗ってからずいぶんと笑うようになった。
「ゾロ」
「ん」
「俺、ゾロのことかなり好きだぞ!」
言って、そそくさと去って行く背中に、ゾロは笑う。
照れて赤く染まった頬と、誇らしげな笑みが見えるようだった。



52 「ちょっと不思議だな」  麦わら海賊団

一瞬、息を呑んだ沈黙が落ちた後、次いでおぉ!という声が盛大に上がった。
その中心にあるのは小さな箱である。
普通のオルゴールに二十四面体のドーム状の屋根がつけられ、それが開くと中で小さな船が大海原をゆったりと進みだす。
彼女の渡る海からは光が溢れ、七つの鏡が取り付けられたドームの内側に反射してまばゆい光の筋が交錯していた。
その光が壁に当たって、ぼんやりと文字が浮かぶ。

Luffy  Zoro  Nami  Usopp  Sanji  Chopper  Robin

「キレイね」
「ちょっと、不思議だな」

思わずと言うように呟いたナミとサンジにウソップが満足そうに鼻を鳴らす。
先日立ち寄った町で、魔鏡の技術に出会った。
その術を彼が頼み込んで学んだのだ。
何とか文字だけ彫れるまでになって、船は港を離れた。
その日からずっと工房に篭っていたウソップが、やっと全員を集めて作品を披露したのだ。
やり遂げた男の顔は晴れやかで、それを見つめるクルー達も皆嬉しそうに笑っていた。

七つの光がゆらゆらと船の上でゆれる。
それはまるで、流れ星のように。
たくさんの願いと想いを乗せていた。

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