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プロフィール
HN:
謡 陸葉
性別:
女性
職業:
社会人1年生
趣味:
読書・観劇・スポーツ観戦
自己紹介:
活字と舞台とスポーツ観戦が大好き。
コナンとワンピに愛を注ぐ。
4つ葉のクローバーに目がない。
寝たがり。
京都好き。
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文字書きさんに100のお題

配布元:Project SIGN[ef]F
http://plaza22.mbn.or.jp/~SignF/



懐かしい、友の夢を見た────







「あ~なんか違うなぁー」
中学に上がって2度目の美術の授業。
少年達は近くの公園にぞろぞろと連れられてきていた。
かなり大きな公園で緑が多く、池には季節ごとの鳥が悠々と泳いでいる。
写生にはもってこいの場所だ。
彼、芦那 鐵(あしな まがね)も例に漏れず、公園の中をゆっくりと歩いては描く物を探していた。
皆が思い思いに被写体を見つけて腰を落ち着けだしても思うような物が見つからず、そろそろ焦りを感じている。
来週も来るとはいっても最終的な時間制限はある。
今日のうちに出来る所までやってしまわなければ妙にこだわる自分のこと、後からの時間調整は不可能に近い。
それが分かっているからさっさと描き出そうと意気込んでいたのだが・・・。
これまた性格が邪魔をしてちっともスケッチブックを開く気になれない。
どうせかくのなら満足いくものを描きたい。
その一点だけの為にもうかれこれ20分程ひたすらに歩いていた。
始めの内は一緒にいた連中も描く物が決まるとさっさと離れて行ってしまった。
一人がそうなると大抵は同じ物のところに留まってしまうので鐵は一人だ。
一番人気の池の傍を通り、秋には眼に鮮やかだろう銀杏の並木道を抜けると簡単な遊具が固まった空間に差し掛かった。
しばらくそこでジャングルジムやらブランコやらを物色して溜息をつく。
なんでだろう、やはり何かが違う。なにか、しっくり来ない。
まただ。
それは、鐵が普段から感じている焦燥感と同じ物だった。
何かが違うのだ。何かが足りない。
それがいったい何なのか自分は分かっていて、ずっと探している。
でも実際にそれが何かと問われれば、言葉が一つも出てこない。
分かっているのに、分からない。
「なにが不満なのかなー、俺」
そう一人ごちて、また溜息を零した。
心の中だけでそんな事を考える自分を友人達に詫びる。
と、三回目の溜息は途中で飲み込まれた。
ふと上げた視線の先に目に鮮やかな黄色が見えた気がしたからだ。
きょろきょろと色の出所を探しながら少し歩いた先、木の中に埋もれるように細い道が伸びていた。
興味を引かれて分け入っていくと、唐突に開けた場所に出た。
そこで見た光景に鐵は思わず息を呑んで言葉を失った。
そこは、一面の菜の花畑だった。
今を盛りと咲き誇る黄色い花の群れが穏やかな春の風に揺れている。
これだ、自分はこれを探していた。
嬉しさで自然と笑みがこぼれた。
時計を見ると集合時間まであと1時間と20分程。
集合場所まで急げば10分掛かるか掛からないかというところだ。
それを確認すると鐵は急いで腰を落ち着ける場所を探した。
「どっかにいい場所ないかなぁ~? 落ち着けて、景色よくって」
「座るのに丁度いいのがある場所~?」
「そうそう・・・って、どわっ!!」
聞き覚えのある声と共に少し先の花の間からにゅっと突き出た白い手に驚いて1mほど後方に飛び退る。
いい反応だなぁと楽しげな笑顔を惜しみなく披露しながら立ち上がった少年がちょいちょいと手招きをする。
見るとそこには人が二人腰掛けるのに丁度いいくらいの大きな石が鎮座ましましていた。
「ホントは俺だけの特等席だったんだぜ?」
だから遠慮して座るよーに。
そんなことを言う物だから思わず笑ってしまった。
名前は確か遠藤。遠藤 広。
飄々とした大人びた雰囲気の少年で、そんなに目立つ訳でもなかったが奇妙な存在感を持っていた。
特別仲のよい友達を作るつもりがないのか、そろそろ固まり始めたクラスでのどのグループにも属してはいない。
大抵は一人で本を読んでいるか、爆睡しているか。
話しかけられれば穏やかに当たり障りのない答えを返しているし、時々は冗談も言う。
それが実に的を得た物で面白いのでクラスでの評判は悪くない。
しかし、彼にはどこか他人を寄せ付けない雰囲気があった。
どこがどうというのではなく、彼は一人でいるのが一番自然体であるのだと何故か全員が認識していた。
そんな彼が常に数人の友人に囲まれている鐵と親しい訳もなく。
ただ、特定の友人を作らないと言う点では二人はよく似ていた。
全ての人間に近づく者と、全ての人間に近づかない者。
対極にいて、一番近い。
一度ゆっくり話がしたい。
そう、鐵は思っていた。

「あのさ、遠藤」
「ん~? あ、そこ、こうした方がいいんじゃない?」
「え、どこ? あ、すげぇ。ありがと」
「いーえー」
「って、そうじゃなくて」
「芦那さぁ、一人でいるの珍しいよなぁ」
「え・・・そう?」
「そう」
「いつも誰かと一緒に騒いでる」
「あ、俺煩い?ごめん。読書の邪魔してたのかな?今度から・・・」
「別に気にしなくていいって。少なくとも芦那は煩くない。ただ」


疲れない?


そんな事を聞かれるとは思わなかった。
驚いて彼の方を見るとキャンパスと菜の花を行き来する楽しげな目が見えるだけでいつもとなんら変わりがない。
どう受け取るべきなのかと鐵は困惑する。
その気配に、相手は更に楽しげにくつくつと喉を鳴らすのだ。
こいつ思った以上に性格悪いぞ。
そんな事を考えつつも全く腹が立つことはない。そのことに、また少し困惑している自分がいる。


「俺、なんかした?」
「いや、お前は笑ってるよ。たのしそーに。こっちまでつられる勢いで」
「・・・馬鹿にしてるだろ」
「違うって。でもさぁ、お前ひとりになった時につくんだよ、溜息」
「え・・・」
「やっぱ気付いてなかったな」
「俺、ついてた?溜息」
「ついてたついてた」
「マジ?」
「マジマジ」

これでもポーカーフェイスには自信があったのだ。
自分はいつでもムードメーカーで、自分の気分しだいで場の雰囲気ががらりと変わることが分かっていたから。
小さな頃からいつも笑っていた。
笑って笑って、疲れや悲しみを隠していた。
心配されたりするのが嫌だったから。
なによりも、相手の笑顔が大好きだったから。ずっと、笑っていて欲しかったから。
いつの間にか身についていた鉄壁の仮面が思わぬところで剥がれていたらしい。
友人達は知っているのだろうか。
どう思った?不快な思いをさせただろうか。何か心配させただろうか。
考え出すとキリがない。

「今、何考えてる?」
「え・・・」
「あいつらに心配かけたかなー?」
「どうして・・・」
「うん。やっぱお前いいわ」
「はあ?」
「芦那、俺の親友決定な」

わけの分からない事を言う。
そりゃ、友達になるのは大歓迎だけれども。
でも、いくらなんでも唐突過ぎる展開に思考が付いていかないのはこういう場合許されていいと思う。

「最初はさ」

芦那が嫌いだった。
いつもすっげぇ明るくて、誰にでも親切で、気が利いて。
そんな奴ありえねぇと思ってたし。
どーせ作りモンで、裏で何考えてるかわかんねぇってね。
でもさ、分かるもんだな。
お前、ホントにあいつら全員のこと好きなんだなーって。
信じらんねぇくらい嬉しそうに笑うから。あぁ、こいつ嘘ついてねぇなぁって。
でさ、じゃああの溜息はなんだって思うわけ。
あぁこいつ自分が疲れてること気付いてねぇんだなって。
分かった瞬間大爆笑。
馬鹿な奴もいたもんだ。
こんなおもしれぇやつ見たことねぇ!珍獣発見だよって。
俺さ、人より頭いいんだよ。
あ、ここ突っ込むとこだから。今度から流さないでね。
で、まわり見てたらさ、いろんなことが見えてくんの。
相手の考えてる事、すっげぇ分かるんだよ。
いつの間にか、人と関わるの止めてたよ。
疲れるんだよな、どうしても、相手の気持ち考えちまって。
あ、こいつ今こう思った。だったらこう返さなきゃ。
嫌になったよ。
皆笑って思ってもないこと言ってんだ。嫌いな奴にも大好きって言ってんだ。
下心バリバリで、友達同士でよいしょよいしょ。
馬鹿らしくなってなー。
俗に言う人間嫌い?そんな感じ。
そんな顔しないの!男の子でしょ~。
そんな俺がだよ?お前から目が離せなかったんだ。
お前がいつも全力で相手のこと考えてるから。
芦那なら、普通に話せるかなーって。そう思ったんだ。
そしたら、話がしたくなった。

ずっと、探してた。一緒にいて疲れない奴。
で、話してみたら想像通りの奴でさ。
俺は今めちゃくちゃ嬉しいわけ。
つーことで、晴れて芦那は俺のお気に入りってこと。
understand?



気がついた時には、俺は大声で笑ってた。
同時に、涙も止まらなかった。
悲しかったんじゃない。嬉しくて、しょうがなかったんだ。
なにがどうなったのかわからない。
なんでなのか、理由なんか知らない。
今の話のどこが俺の心に響いたのか、できることならこっちが聞きたいくらい。
でも、なんか、わかっちゃったんだから、しょうがないじゃん?
俺に足りなかった物、俺がずっと探してたのは、こいつだ。



「泣くなよー」
「泣いてない!」
「あーはいはい。よろしくー」
「よろしく!!」
「うっわぁ~なんか投げ遣りよー鐵ちゃん」
「煩い」
「なによ、なんか俺にはキツクナイ?」
「気のせいだバカ!」
「あーはははっ。親友万歳?」
「万歳万歳!!」


その後はしばらく二人して泣き笑い。
遠藤も、実は結構緊張してたらしい。
俺にはわからなかったけど、本人がそういっていたからそうなんだろう。
他愛のない話をした。
互いのキャンパスを覗きあって、的外れなアドバイスをしあったりもした。
元々短かった時間は、あっという間に過ぎてしまった。
道具をカバンに仕舞い、二人して黄色い花達に別れを告げる。

「なんかさ、このままじゃダメだって思ったんだよ」
「何が?」
「鐵」
「俺?」
「ほっといたらこいつ、絶対幸せになれねぇって」
「ひっでぇ!そんなの、ヒロの方が友達いなくてよっぽど幸薄そうだったんだからな!」
「お、いったねー。俺、こう見えて世渡り上手よ?」
「俺だって、ポーカーフェイスは得意だ」
「へぇ~」
「あ、なんだよそれ」

来た道を早足で引き返しながらお前はどうだ、お前こそどうだと相手の幸せになれません要素を上げて行く。
こんなに楽な会話は久しぶりかも知れなかった。
心に、何の構えも無い。
水面下で知らず、悲鳴を上げていた自分。
それを見つけ出してくれた相手。
きっとこれは一生物の出会いになる。
自分達はこれから先、ずっと親友の位置にいるのだろうと漠然と思う。
そう、思えることが無性に嬉しかった。

「ヒロ」
「ん?」
「お前は・・・・いや、なんでもない」

きっと、幸せになれるよ。
俺は今、幸せだ。


「・・・・・鐵、菜の花の花言葉知ってる?」
「え?知らなっい!?」

突然何を言い出すのかと不思議に思って隣を見ると思い切り肩を後ろへ押されて派手に尻餅をつく。
いったいなんなんだと腰をさすりながら顔を上げるとニヤニヤとした笑い顔。
次の瞬間には走り出した背中。

「競争だよ!」
「え、ずるっ!」

俺が幸せになるのが先か、お前が先か。


多分、彼が言いたかったのはかけっこの提案ではないのだろう。
いつまでもこの不毛な言い合いを続けていたい。
彼はそう言っているのだ。
ずっと、いつまでも、一緒にいたいと言っているのだ。
そして鐵は走り出す事でそれに答える。

いいだろう、乗ってやる。

銀杏並木に、ひどく楽しそうな声が二人分。
しばらく響いてバタバタと消えた。







朝の光に促されて鐵はうっすらと目を開けた。
日光の当たっていない方の目じりに一筋涙が流れた。

「ヒロ・・・・今、幸せ?」

ベッドサイドに置かれた銀色のロケット。
その中で楽しげに微笑む彼を思い浮かべながら答えの返らない問いかけを零す。
あの日から4年。
一緒にいられたのは、わずが2年。
鐵はもう高2の秋を迎えている。
今日、鐵は彼を喪ってから初めて会いに行く決心をしていた。
この2年、ずっと引きずっていた罪悪感を振り払って、もう一度親友に会いに行こうと。
彼に彼女を紹介するのだ。
そして、自分は今幸せだと、心のそこから笑ってやるのだ。
自分はもう、大丈夫だから、お前も笑えと。


ベッドから抜け出して机の方に目をやる。
「コスモスとかにしようと思ってたけど、やっぱな」
今は秋だから、多分見つからないだろう。
本棚の一番端。
うっすらと埃を被ったスケッチブックに手を伸ばす。


今度はどんな勝負を吹っかけよう。
楽しい物がいい。
なかなか決着のつかない物がいい。
会うまでにはまだ時間がある。
ゆっくり考えよう。

腕の中で鮮やかに咲き誇る黄色い菜の花。
その脇に小さく自分の物ではない字体で書かれた『競争』の二文字に鐵は柔らかく微笑んだ。





ありがとう。
君に出会えてよかった。
ありがとう。
君がいてくれてよかった。
幸せだったね、僕達は。

僕はもう、大丈夫だ。
僕は、また笑えてるよ。

僕のこれまでを、君は怒ってるだろ?
これだからお前は馬鹿なんだって、呆れてる?

そうだよね、忘れてた。
誰よりも君を知ってた僕なのに。
ごめん、忘れてた。

僕は生きるよ、君の分まで。
生きて、もう一度幸せになる。
君の分まで、幸せになる。
二人で、一緒に幸せになろう。

ありがとう。
僕は、君のことが大好きです。





2004年 1月

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